“Chess story” Stefan Zweig


 

引き込まれる展開。筆さばきも素晴らしく英語がところどこらわからなくても疾走感はあった。これ原著はドイツ語だったのか。英語版Kindleで読みました。

ひとつだけ。
天才は自分の頭のなかでかなりのものを作り上げ操作することが出来る。苦なく出来る。(多分出来る。)私はずっとそういう才能を本当に羨ましいと思っていた。何かを理解し頭のなかでいじれるようになるために、そしてそれを維持するために、どれだけの苦労があるかと思うと、そういった苦労を知らないですむ天才たちを素直に羨ましいと思っていた。
たが、ここで出てくるDr.Bは少し違う。確かに彼ははじめからチェスにTalentedではあったが、ナチスの尋問室に閉じ込められ、他に何もすることがない状況で偶然手にした本がチェスの棋譜集だったことから、すがるようにチェスにはまり狂っていく。チェス盤を頭にいれ、こまを頭に入れ、歴代のグランド・マスターの棋譜を頭に入れ、一人で二人の役を演じ対戦を繰り返し繰り返し繰り返し、、、完全に完結したチェスワールドを頭のなかに創りあげてしまった。
こうなるともう誰も彼を止めることは出来ない。暴走する思考は彼の行動を狂わせ、精神はもちろん肉体をも傷つけて、狂気に陥って破滅した。
Finally this monomaniacal obsession began to afflict not only my mind, but my body. I grew thinner; my sleep was fitful and restless; on waking an exceptional effort was required to open my heavy eyelids. On occasion I felt such enervation that I could bring a drinking glass to my lips only with effort, so badly did my hands shake. But the moment a game began an elemental power overcame me: I dashed back and forth with clenched fists, and sometimes I heard my own voice, as if through a red mist, hoarsely and angrily yelling ‘Check!’ or ‘Checkmate!’ to itself.
僕が勉強するのに少しばかり怠惰なのは、自分を狂気から守るためかもしれない。
自分の生活に無駄なものが溢れているのも、自分を偏狭と視野狭窄から守るためかもしれない。
そう思うと、やる気の出ない気怠い自分も、すぐ気が散る散漫な自分も多少は愛せるようになる。

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